アルジェリアの首都アルジェに近いアインタヤ地区のシュルクフ村に住んでいる30代の店主、タハル・ファヌーリは、2002年4月アルジェリア治安部隊によって拘禁中に拷問を受けた。

　タハル・ファヌーリが逮捕され、約１週間軍事基地に拘禁されて拷問を受けたのは、スイスに亡命しているアルジェリア人人権擁護弁護士、ラシッド・メスリにとった連絡に関して情報を聞き出すためだったと考えられる。

　タハル・ファヌーリの釈放後すぐに彼を見た目撃者によると、彼の顔や体には殴打の痕が残っていたという。彼は、明らかに数度にわたって打ちのめされていた。また、タハル・ファヌーリは連続４日間、冷水をはった浴槽に入れられ、その間彼は身体の自由を完全に奪われていたので、水面から上には頭しか出すことができなかったと報告されている。

　タハル・ファヌーリは、水中で魚捕りを楽しむことが知られており、４日間も冷水の入った浴槽に拘束するというかなり異常な処罰は、残酷にも彼の趣味を引き合いにして考案された拷問だったと考えられる。

関係した人権弁護士

　タハル・ファヌーリが連絡をとっていたアルジェリア人の人権擁護弁護士、ラシッド・メスリは2000年にスイスに移って以降、アルジェリア政府による人権侵害に反対するキャンペーン活動に積極的に携わっており、その結果として政府から相当に注目を集めてきた。

　タハル・ファヌーリが逮捕された頃、ラシッド・メスリ自身もアルジェリア政府によって不在のまま、海外で活動する「武装テロリスト集団」と関係を持っているとして起訴された。それは、2002年3月に逮捕された2人の男性がアルジェリア治安部隊による拷問を受けて、彼らはラシッド・メスリと関係があり、他方では武装勢力と関係があると「自白」する内容の証言を強要された後のことである。そして、ラシッド・メスリに対する国際逮捕令状が発行され、このニュースはアルジェリア国内や世界中の報道において広く公表された。
 
アルジェリアにおける拷問

　アルジェリアから報告される拷問事件の数は、政治的逮捕が少なくなった3年前くらいから著しく減少したにもかかわらず、それ以降もアムネスティ・インターナショナルは拘禁中の拷問や虐待を受けた数多くの人びとからの報告を受け続けてきた。多くの人びとは、武装集団と関係があるか、もしくは反政府抗議活動に参加したという容疑で逮捕された。国内の人権擁護弁護士は、報告された拷問事件は、氷山の一角にしかすぎないと考えている。というのも、多くの被害者は暴力を報告すると自分の窮境を単に悪化させるだけでなく、政府からの報復に家族をさらすことになると恐れて、彼らの事件について決して話さないからだという。秘密拘禁中に、被拘禁者は拷問や虐待を受けたり、あるいは「失踪」したりする極めて大きな危険にさらされている。

あなたができること

　アルジェリア法務大臣にアラビア語、フランス語、英語、または、母国語で下記の内容の手紙を書いて下さい。
　・ タハル・ファヌーリが、拘留中に拷問を受けたという報告に憂慮していることを表明する。　
　・ すべての拷問・虐待の申し立てについて、速やかに独自に調査するよう要請する。
　・ 拘禁中に拷問が行われないよう防止する効果的な防護措置を、遅滞なく実行するよう当局に要請する。

　 アルジェリア法務大臣
　Son Excellence M. Mohammed CHARFI
　Ministre de la Justice
　Ministère de la Justice
　8 Place Bir Hakem, El Biar, Alger, Algeria
　Fax: + 213 21 921243 / 921701

例文

大臣閣下、

　私は、2002年４月１０日にタハル・ファヌーリがアルジェリアの治安部隊に逮捕された後、拘禁中に拷問されたという報告に大変な関心を持って注目しております。拷問禁止等条約の加盟国として、アルジェリア政府は拷問から市民を保護することを誓約しました。同条約第12条に規定されているとおり、締約国は「自国の管轄の下にある領域内で拷問に当たる行為が行われたと信ずるに足りる合理的な理由がある場合には、自国の権限のある当局が迅速かつ公平な調査を行うことを確保する」ことが義務付けられております。タハル・ファヌーリが、ベン・アクノウンの軍事基地で釈放されるまで１週間にわたって繰り返し拷問を受けたことは明らかです。
　私は、なぜタハル・ファヌーリの拷問の申し立てが調査されていないかを確証するため、大臣がどのような処置を取ったか知りたいと思います。この事件は、アルジェリアにおける治安部隊による持続的かつ広範囲な拷問の一部ではないかと懸念しています。これ以上の遅滞なく公平な調査を実行し、今後同様の申し立てを速やかに調査すると保証する処置を、即刻お取りください。また、拘禁中の拷問が行われないよう防止する効果的な防護措置を、遅滞なく実行するよう要請します。

敬具