西サハラではこれまで以上に人権監視が必要である

2020年11月30日
ヤスミン・カチャ　アムネスティ・アルジェリア/モロッコ/西サハラ調査員

11月13日、モロッコ軍は紛争中の西サハラ地域のゲルゲラート村で、3週間前にサハラーウィ〔西サハラ人〕約60人による平和的抗議行動として設置したキャンプを取り壊す作戦を開始した。モロッコ当局によると、このキャンプは西サハラの非自治領[1]のモロッコ占領地とモーリタニア間の交通を遮断していたという。

モロッコは軍事作戦の成功を宣言し、交通は再開した。しかし翌日〔亡命政府である〕サハラ・アラブ民主共和国（SADR）のブラヒム・ガリ大統領は、ポリサリオ戦線は1991年から続いていた停戦を終了すると発表した。その後、双方の間で銃撃戦が繰り広げられているとの報告がある。

西サハラの人権状況を監視する地元の団体によると、モロッコ軍の作戦後、モロッコ警察によるサハラーウィ活動家への家宅捜索、監視強化、逮捕などの弾圧が行われた。

ゲルゲラートでのこの最新の出来事の根源は、モロッコがこの地域でアスファルト道路の建設を開始した数年前にさかのぼる。この村はモロッコとポリサリオ戦線の停戦を監視する国連平和維持軍である西サハラ住民投票ミッション(MINURSO)の監視下にある緩衝地帯である。

ポリサリオ戦線は、道路建設は国際法違反であると抗議した。自決支持のサハラーウィは、世界でも数少ない未解決の非植民地化状況の1つに対し、解決策を見つけるという国際社会の約束を思い出させるために、この地域で平和的なデモを組織し始めた。

この衝突で民間人の死傷者は報告されていないが、最近の動きは、アルジェリア南西部のチンドゥーフにあるサハラーウィ難民キャンプと同じく、この地域での独立した公平で効果的な人権監視メカニズムの緊急必要性を強く思い出させる。

過去10年間、国連安全保障理事会は、MINURSOに人権部分を追加するようにというアムネスティや他の団体の要請を無視している。MINURSOは人権侵害の監視と報告が可能である。世界中の同じような国連ミッションの大多数が行っているように。

これに加えて、近年、人権状況の悪化が続く中、この地域のアクセスが外部からの監視者にますます困難になっているという事実がある。2020年、モロッコ当局は少なくとも9人の弁護士、活動家、政治家の西サハラへのアクセスを阻止した。ジャーナリストもアクセスを拒否されている。

モロッコとポリサリオの対立が悪化する中、地元の人権活動家とサハラーウィの自決を支持する人びと両方が、より一層の圧力にさらされるようになっている。

11月13日から21日に、モロッコ警察はラーユーン市やブジュドゥール市で、複数のサハラーウィ活動家やジャーナリストの自宅を包囲し、厳重に監視した。標的にされたのは、活動家のマフーフーダ・レフキレ、ナザ・エル=カリディ、アハメド・エッタンジである。

西サハラの人権状況を監視している地元団体も、ラーユーンで少なくとも4人のサハラーウィが逮捕されたと報告した。1人は11月19日に逮捕された12歳の少女で、学校で軍服仕様の服を着て、サハラーウィの国旗シャツを着ていたと報告されている。彼女はその日のうちに釈放された。

一方、今年8月、ポリサリオ戦線警察はチンドゥーフの難民キャンプで市民ジャーナリストのマフムード・ゼイダンを逮捕した。彼は24時間拘束され、ネット上で公開した記事について取り調べを受けた。その記事でCOVID-19の間に援助物資の分配を批判した。

現在、西サハラでもチンドゥーフの難民キャンプでも、国際的人権団体が地上から監視・報告することはほとんど認められていない。

とくにこの地域をめぐる長期的紛争の新たな紛争局面を前に、民間人を危険にさらす新たな戦闘と、双方による反対意見への弾圧が増大する可能性があることを考えれば、これは変えなければならない。
現在、西サハラにおける公平で独立した国連による人権監視と報告が、これまで以上に切実に必要である。

[1] 西サハラは、モロッコとモーリタニア間の大西洋岸にある元スペイン植民地である。1975年にスペインが撤退して以来、国連は西サハラを「非自治領」とみなしている。1991年、モロッコとポリサリオ戦線との間で停戦が調印され、国連平和維持ミッション（MINRUSO）が設置された。現在、この地域はモロッコが建設した2700kmの砂壁で分断され、事実上、モロッコがその西側を支配している。壁の東側はポリサリオ戦線によって解放された地域であり、その本拠地は1973年以来、アルジェリアのチンドゥーフ市にあるサハラーウィ難民キャンプにある。