2006年の大統領選挙は、殺傷力の高い武器の過剰な使用や恣意的逮捕・拘禁、強制的失踪を含む人権侵害によって損なわれた。最近2カ月間、ジャーナリストや野党指導者の恣意的逮捕、平和的な政治行事の弾圧、人権擁護活動家に対する死の脅迫が行なわれており、来る2011年選挙前および選挙期間への懸念が起こっている。

　これら最近の出来事を考慮して、アムネスティ・インターナショナルは、コンゴ民主共和国(DRC)当局に、人権擁護活動家や野党党員を含む国民の結社・集会・表現の自由の権利を守るように要請する。とくにアムネスティは、人権擁護活動家を脅迫や恣意的逮捕・拘禁から保護し彼らの合法的な活動を実行できるようにするよう当局に要請する。これらの権利に違反した形で刑法を適用しないこと、そして野党党員を含め犯罪活動で起訴された人はみな公正な裁判をうけることを保証するように要請する。さらに暴力事件において、当局は人権侵害の申し立てについて迅速で十分かつ公正な調査を行なわなければならない。この調査は責任者を特定し、裁きにかけることができる。

人権擁護活動家に対する死の脅迫

　アムネスティは、国が2011年11月の大統領選挙の選挙前期間の準備をする中での、DRCにおける人権擁護活動家や野党指導者の安全および表現・結社の自由の権利について憂慮する。

　著名な弁護士であり人権活動家であるアフリカ人権擁護協会(ASADHO)キンサシャ事務所のジャン=クロード・カテンデとジョージ・カピアムバは、2月1日に記者会見を開き、多くの具体的な事件に言及して野党党員への嫌がらせや弾圧について政府を非難した。その後2月1日と2日に露骨な死の脅迫を受けた。

　脅迫は匿名で異なる番号から携帯メールで送られていた。メッセージの1つはこう述べていた。「もしお前が我々に対するこの中傷キャンペーンを続けるなら、お前の残りの日を数えてやるぞ。」「お前の国際的パートナーたちはお前を救ってくれないだろう。」 別の電話は、政府を公然と非難したのだから男性たちは攻撃されるだろうと警告した。

　記者会見の日に、メディア・コミュニケーション大臣であり政府報道官であるランバート・メンデは、国連が出資したラジオ局であるラジオ・オカピで、ある告発を否定し、他の人たちのさらなる証拠を要求しつつASADHOが提起した問題に答えた。彼はまた人権団体を嘘の流布、正体不明の国を支配しようとする外国の団体の道具であると非難したと報告されている。

　過去にも自分たちの合法的な活動を実行する人権擁護活動家に対して政府が同様の告発をした後に、表現の自由の権利を侵害する恣意的裁判が続いた。たとえばASADHOカタンガ事務所のゴールデン・ミサビコ、人権のためのネルソン・マンデラの友人のロバート・イルンガの2009年の裁判がある。

　政府は人権擁護活動家に対する責任を守ると保証するべきである。とくに彼らが脅迫や恣意的逮捕・拘禁から保護すること、そして2人の人権擁護活動家が受けた脅迫について公正で十分かつ有効な調査、そして責任があると判明した人に対する具体的な活動を含む、ジャン=クロード・カテンデとジョージ・カピアムバを保護するために必要な措置を取ることを保証するべきである。

野党への弾圧

　野党に対する嫌がらせや脅迫などの最近の行動も報告されている。

　野党民主キリスト教党首、ウジェーヌ･ディオミ･ンドンガラは、2011年1月13日バ・コンゴ州モアンダで逮捕された。彼は2月に予定されていた国会開始前に、同じ党の党員を訪問していた。この逮捕は一般移民管理局(DGM)の職員と思われる人物が仕事を始める前の夜の事件後に起きた。彼は起訴され、翌日公権力の侮辱および暴行罪（クーデターおよび暴行罪）で懲役5カ月の有罪判決を受けた。ウジェーヌ･ディオミ･ンドンガラは最終的には2月3日控訴審で無罪となった。彼が申し立てたとおり、有罪判決は不十分な証拠に基づいていること、ウジェーヌ･ディオミ･ンドンガラと喧嘩をした人物は実際にはDGMによって雇われている記録がなかったと裁判所は認定した。

　DRC東部では、1月27日、警察と軍は、北キヴ州ブテムボのフルおよびカトワの近辺で2つの若者グループが組織したイベントを解散させた。これらのグループは、最近上院を通過した、大統領選挙を投票1回に制限するという憲法修正の取り消しを求める請願書に署名を集めていた。治安当局はこれらのグループから横断幕を引き離し、国家諜報局(ANR)はこれらのグループが集めた6万5千400人分の約半分近くの署名を奪ったと言われている。軍は1月27日から30日までその近辺を周回し、グループに関係するすべての人を見つけ捕まえるために近所の家々を捜索した。この夜ANRによる多くの恣意的逮捕が行なわれ、軍メンバーが住民から家畜を略奪したという報告もある。すべての被拘禁者は2月3日釈放されたと報告されている。

　アムネスティは、長年とくにANRによるそれほどではないにせよDGMの、とくに政治的に異なる人びとに対する人権侵害への文民治安当局の広範な関与を発表してきた。それゆえに治安当局による新たなこのような脅迫事件が続き、選挙までの9カ月間も増加するのではないか憂慮している。

ジャーナリストの恣意的拘禁

　2010年12月17日、地元のラジオ-テレビ局であるラジオ・テレビ・コミュニケーション・ミツムバ(RTCM)のディレクターである、ジャーナリストのロバート・シェーマハムバは、南キヴのウヴィラでANRに恣意的に逮捕され、拘禁された。ロバート・シェーマハムバは12月12日ラジオ・ミツムバでラジオ討論の司会をした。その中で他の問題と一緒に、カビラ大統領の国民議会に対する国民演説の状況について討論をした。ロバート・シェーマハムバは12月13日州検察官に召喚され尋問された。12月17日、彼はANRによって彼に対する容疑を伝えられずに召喚され拘禁された。彼は12月27日までだれとも面会を許可されず2つの別のANR拘禁センターに拘禁された。

　ラジオ・マエンデレオの記者であり、そのラジオ討論に参加をしたドミニク・カロンゾは、12月24日彼を無理矢理逮捕しようとしていたANR職員によって人前で暴行を受けた後、身を隠している。